【NHK「ニュースウォッチ9」出演】「鶴ヶ島市高齢者施設殺傷事件」の教訓!医療・福祉施設の効果的な防犯対策
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「総合防犯設備士」の新井富美男です。
先日、NHK「ニュースウォッチ9」ディレクター様のご依頼で、防犯対策の専門家として埼玉県鶴ヶ島市で発生した高齢者施設殺傷事件の概要と「医療・福祉施設の効果的な防犯対策」について、10月15日~16日の二日間にわたって「ニュースウォッチ9」で出演・解説しました。
特に、NHK姫野アナウンサーの鋭いご質問を受けて、この福祉施設における電子錠の暗証番号管理体制など殺傷事件発生の一因となった問題点とその防犯対策について解説できたと思います。
そこで今回は、「ニュースウォッチ9」番組内では伝えきれなかった「医療・福祉施設の効果的な防犯対策」について分かりやすく解説します。

【NHK「ニュースウォッチ9」出演】「鶴ヶ島市高齢者施設殺傷事件」医療・福祉施設の防犯対策解説
「鶴ヶ島市高齢者施設殺傷事件」概要
2025年10月15日、埼玉県鶴ヶ島市の高齢者施設「若葉ナーシングホーム」において、施設の元職員が暗証番号式の電気錠を不正解錠し侵入、入居者二名が殺傷される痛ましい事件が発生しました。
本事件では、元職員の退職後も一年以上変更されなかった暗証番号の管理をはじめとする出入管理体制や総合的な防犯対策のあり方について、改めて社会全体で考える契機となっています。
近年、福祉施設・医療施設での痛ましい事件が相次いでおり、多くの関係者が心を痛めています。
特に高齢者施設は、利用者が安心して生活できる「家庭的な環境」を提供する一方で、外部からの侵入や内部でのトラブルに対する安全確保も求められるという、難しいバランスを迫られています。
NHK「ニュースウォッチ9」インタビュー中にもお伝えしましたが、2016年「津久井やまゆり園殺傷事件」発生から9年経過した現在の医療・福祉施設における「防犯意識」のゆるみが非常に残念です。
「津久井やまゆり園殺傷事件」の検証ブログ記事はこちら↓
【相模原殺傷事件で検証!福祉施設の防犯対策】
医療・福祉施設における効果的な防犯対策とは
「開放性」と「閉鎖性」のバランス
医療・福祉施設の最大の特徴は、「開放的で温かい雰囲気」と「閉鎖的な安全確保」という、一見相反する要素の両立が求められる点です。
過度に閉鎖的な環境は、利用者やご家族に圧迫感を与え、施設本来の目的を損なう可能性があります。
しかし、開放性を重視しすぎると、防犯上の脆弱性が生まれてしまいます。
このバランスを取るためには、目に見える威圧的な設備ではなく、利用者の生活を妨げない形で安全を守る「スマートな防犯対策」が重要となります。
多層的な防犯対策の必要性(総合的な防犯対策・広義のセキュリティ対策)
効果的な防犯対策は、単一の手段ではなく、複数の層を組み合わせた総合的なアプローチが必要です。
物理的防犯対策(ハードの防犯対策):防犯設備
出入管理用の電気錠システム・施設内監視用の防犯カメラなどの防犯設備による防御を行います。
これらは24時間休むことなく施設を守り、職員・スタッフの負担軽減と入居者の安全に大きく寄与します。
人的・組織的防犯対策(ソフトの防犯対策):防犯意識
職員への防犯教育や訓練の実施、そして何より職員のメンタルヘルスケアが重要です。
ストレスを抱えた状態では、適切な判断や対応が難しくなります。
定期的な面談や相談体制の整備、適切な労務管理が事件予防につながります。
防犯マニュアルの整備、緊急時の通報体制の構築、そして退職者へのフォロー体制も含まれます。
特に退職時のトラブルや不満が後の事件につながるケースもあるため、円満な退職プロセスの整備も重要な防犯対策となります。
5つの重要防犯対策ポイント
NHK「ニュースウォッチ9」でも解説させていただきましたが、医療・福祉施設で特に重要な防犯ポイントは以下の5つです。
①出入管理の徹底:セキュリティ担当責任者が暗証番号・ICカードなどの出入権限を厳重に管理。
誰がいつ施設に出入りしたかを確実に記録・管理することで、万が一の際の検証が可能になります。
②監視・記録システムの導入:AI機能付き防犯カメラなど、不審な行動を自動検知できるシステムの活用が効果的です。
③職員のメンタルヘルス・労務管理:職員が心身ともに健康な状態で働ける環境づくりが、結果的に最も重要な防犯対策となります。
④防犯訓練・避難訓練の定期実施:緊急時に適切な行動を取るため、定期的な訓練が不可欠です。
⑤緊急時の通報体制構築:警察・消防への迅速な通報ルートの確立と、職員間の連絡体制の整備が重要です。

具体的な出入管理システムの紹介と選定ポイント
ここでは今回、元職員が不正解錠して侵入した暗証番号入力式の電子錠をはじめとする「出入管理システム」について詳しく解説します。
暗証番号入力式の電気錠システム
今回の高齢者施設「若葉ナーシングホーム」で不正解錠されたのがこの暗証番号入力式の電気錠システムです。
中小規模の医療・福祉施設では暗証番号の定期的変更など運用管理が困難なので減少傾向にあります。
メリット:テンキーパッド式など暗証番号入力による電気錠は、比較的安価なので導入しやすく、物理的な鍵の複製や紛失リスクを軽減します。
デメリット:定期的又は職員退職などのイベント発生時に暗証番号を変更し、それを利用者に周知する必要があります。
「若葉ナーシングホーム」では容疑者の退職後、一年以上変更されていませんでした!

【テレビ埼玉「ニュース930Plus」出演】「老人ホーム殺傷事件」防犯対策解説より
ICカードによる電気錠システム
ICカードシステムは、個人ごとにカードを発行し、入退室を確実に記録できるシステムです。
私が担当する医療・福祉施設の70%がこのICカードタイプです。
メリット:誰がいつどこに入ったかが自動的にログとして残るため、事後検証が容易になります。
接触型と非接触型があり、最近では衛生面から非接触型が主流です。
FelikaやMifareなどの規格があり、複数施設で共通利用することも可能です。
カード紛失時の迅速な無効化対応や、職員・業者・来訪者など属性別のアクセス権限設定ができる点が重要です。
福祉施設では、職員用と業者用でアクセスできるエリアを分けるなど、柔軟な運用が可能です。
デメリット:後から増設する場合、ある程度、ICカードシステム導入に費用が掛かります。
ICカード紛失の危険性がありますが、紛失したカードのアクセス権限の削除は容易です。

アズビル株式会社:ICカード式出入管理システム
生体認証による電気錠システム
生体認証は、指紋・顔・静脈などの身体的特徴を用いた認証方式で、カードの紛失やなりすましのリスクがない最も確実な認証方法です。
医療・福祉施設では20%程度のシェアがあり、今後、出入管理システムの主流となると思われます。
メリット・デメリット
「指紋認証」は比較的低コストで導入しやすい反面、手荒れや加齢による認証精度の低下が課題です。
「顔認証」は非接触で衛生的ですが、照明条件に左右されることがあります。
「静脈認証」は最も精度が高く偽造も困難ですが、コストは高めです。
医療・福祉施設では、薬品保管庫や記録保管室など、特に重要なエリアへのアクセス管理に適しています。

株式会社NSS:顔認証カメラ出入管理システム
AI監視カメラとの連携による電気錠システム
最新のAI機能付き監視カメラは、不審な行動パターンを自動検知し、管理者に通知する機能を持ちます。
例えば、深夜に特定エリアに人が侵入した場合や、通常とは異なる動きを検知した場合にアラートを発することができます。
出入管理システムと連携させることで、ICカード認証の記録と実際の映像を突き合わせ、より確実な管理が可能になります。
ただし、プライバシーに配慮し、居室内への設置は避け、共用部や出入口など必要最小限の範囲に限定することが重要です。
システム導入時の注意点
これらの出入管理システムを導入する際は、費用対効果を考慮し、予算に応じた段階的な導入計画を立てることをお勧めします。
まず優先度の高いエリア(高リスク)から始め、効果を確認しながら拡大していくアプローチが現実的です。
また、どんなに優れたシステムも、職員・入居者など利用者が理解していなければ意味がありません。
防犯対策・セキュリティ担当責任者を任命し、職員への十分な研修と、定期的なメンテナンス・更新計画も含めた運用体制の構築が必須です。
さらに、システムトラブル時のバックアップ体制も事前に整えておくべきです。
【NHK「ニュースウォッチ9」出演「鶴ヶ島市高齢者施設殺傷事件」の教訓!医療・福祉施設の効果的な防犯対策】総括
医療・福祉施設の防犯対策で最も重要なのは、「機械的な防犯設備だけに頼らず、人的な防犯意識の維持向上も重視にする総合的なアプローチ」つまり「効果的な防犯対策=防犯意識+防犯設備」の方程式です。
たとえ最先端の生体認証による出入管理システムを導入しても、それを日常的に運用管理する職員が心身ともに健康で、適切な教育を受けていなければ効果は半減します。
内部犯行リスクへの対応は、監視や管理を強化するだけでなく、職員が働きやすい環境を整え、風通しの良い組織文化を作ることが根本的な解決につながります。
防犯対策は一度導入すれば終わりではなく、継続的な見直しと改善が必要です。
社会情勢や技術の進歩、そして施設の状況変化に応じて、常に最適な対策を模索していくことが求められます。
当社では、医療・福祉施設の特性を理解した総合的な防犯対策のご提案から、実効性のあるセキュリティシステム構築まで一貫してお手伝いしております。
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